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JOURNAL / ケーススタディ

30代夫婦・住宅探しに疲れた——「買える額」から「返せる額」へ

物件を見るほど予算が上がり、住宅探しに疲れてしまった30代ご夫婦の事例。「審査に通る額」と「家計が続く額」の違いを整理し、予算を先に決めてから物件を見る順番に変えた過程を紹介します。

内見先の空室で一息つき、無理のない住まい選びを考える夫婦(イメージ)
ケーススタディ
原稿時点とご利用にあたって

この記事は2026年7月原稿の移行版です。制度・税制・統計は当時の説明であり、現在の適用条件とは異なる場合があります。個別の判断前に、公式情報や専門家にご確認ください。

本記事は判断の考え方を伝えるための架空の事例です。実在のお客さまの実績・体験談ではありません。

BEFORE YOU READ

この記事で考えること

「いい物件だと思うと予算オーバー。予算内に収まる物件は、どこか妥協が残る」。住宅探しの相談で、この言葉を何度伺ったか分かりません。最初は楽しかったはずの内見が、回数を重ねるほど疲れに変わっていく。そして気づけば、当初考えていた予算を大きく超えた物件を「これくらいなら何とかなるかも」と眺めている。

今回ご紹介するのは、まさにその状態で相談にいらした30代のご夫婦のケースです。「買える額」ではなく「返せる額」から予算を組み立て直したことで、物件探しそのものが変わりました。いま住宅探しの渦中にいる方に、判断の順番というヒントをお渡しできればと思います。

本記事の事例は、よくあるご相談をもとに再構成した架空のケースです。実在の個人・世帯とは関係ありません。

相談者プロフィール

  • 30代半ばの共働きご夫婦、未就学のお子さまが1人
  • 世帯収入は同世代として平均的な水準
  • 賃貸住まい。物件探しを始めて半年あまり

お二人とも堅実な性格で、浪費があるわけではありません。それでも「住宅のことになると、自分たちの金銭感覚が信じられなくなってきた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

相談前の悩み——見るほどに、予算が上がっていく

探し始めた当初、お二人には「このくらいまで」という予算感がありました。ところが実際に物件を見て回ると、あと少し出せば駅に近くなる、あと少し出せば部屋がひとつ増える、という比較が始まります。気づけば当初の想定より月々の返済が数万円単位で重くなる物件を検討していました。

これはお二人の意思が弱いからではありません。先に魅力的な物件を見てしまうと、それが基準点になり、金額の感覚が物件側に引っ張られていく。住宅探しでは誰にでも起きる心理です。しかも不動産の広告には「月々の支払いは今の家賃と変わりません」といった見せ方が多く、総額ではなく月額で比べるうちに、予算の輪郭はどんどん曖昧になっていきます。

さらにお二人を混乱させたのが、事前審査の結果でした。金融機関が提示した借入可能額は、自分たちの想定よりはるかに大きかったのです。「銀行がここまで貸せると言うなら、大丈夫ということでは?」——この疑問が、今回の相談の入口になりました。

相談で整理したこと——「買える額」と「返せる額」は別物

私は信用金庫で5年間、貸す側にいました。だからお伝えできることがあります。住宅ローンの審査は、収入に対する返済額の割合など、機械的な基準で「貸せる上限」を計算するものです。その家庭がこれから教育費をいくらかけたいか、車をいつ買い替えるか、老後にどんな暮らしをしたいかは、審査項目にありません。つまり審査に通る額とは、金融機関から見て回収できる額であって、その家計が無理なく返し続けられる額ではないのです。

買える額(審査基準)

  • 金融機関が「貸せる上限」として計算する
  • 収入と返済比率が中心の機械的な判定
  • 教育費や老後の希望は考慮されない

返せる額(家計基準)

  • 自分たちの家計から逆算して決める
  • 教育費・老後準備と両立できる水準
  • 収入の変化や支出の波を織り込む

この二つの間には、しばしば大きな開きがあります。開きがあること自体は問題ではありません。問題なのは、上限いっぱいを「自分たちの予算」と誤解してしまうことです。お二人とはまず、この区別を共有するところから始めました。

順番を変える——予算を先に固めてから、物件を見る

整理した判断軸は、シンプルに言えば「物件が予算を決めるのではなく、家計が予算を決める」です。そのために、物件情報からいったん離れて、次の手順で予算を固め直しました。

  1. 今の家計から住居費の上限を出す現在の家賃と貯蓄ペースをもとに、毎月いくらまでなら住居費に充てても家計が回るかを確認する
  2. 将来の変化を織り込む教育費が増える時期や働き方が変わる可能性を挙げ、上限に余白を持たせる
  3. 維持費まで含めて総額に換算する税金や修繕など持ち家特有の支出も見込み、月々の上限を物件価格の目安に置き換える
  4. その範囲内で物件を探す予算を先に確定させ、超える物件は最初から検討の土俵に載せない

ポイントは、予算を「物件を見る前」に決め切ってしまうことです。魅力的な物件を見た後では、どんな計算も物件に有利な方向へ歪みがちだからです。

POINT

住宅予算は「借りられる上限」からではなく、「教育費・老後準備と両立できる毎月の住居費」から逆算する。予算の確定は、物件を見る前に済ませる。

その後の変化

予算を固め直した結果、お二人の検討対象は以前より絞られました。一見すると選択肢が減ったように思えますが、実際には逆でした。「この範囲なら、どれを選んでも家計は大丈夫」という土台ができたことで、物件の比較を安心して楽しめるようになったのです。

数か月後、お二人は当初の想定に近い水準の物件に決められました。決め手を伺うと、「一番いい物件を探すのをやめて、自分たちの暮らしに合う物件を探すことにしたら、すっと決まった」とのことでした。

予算を先に決めた人は、物件に振り回されない。

まとめ——家の値段は、物件ではなく家計から決める

同じ状況にいる方への示唆を、三つに絞ってお伝えします。

  • 審査に通る額は「貸せる上限」であって、あなたの家計が返せる額ではない
  • 予算は物件を見る前に、教育費・老後準備との両立から逆算して決め切る
  • 探すのは「一番いい家」ではなく「自分たちの暮らしと両立する家」

住宅探しに疲れたと感じたら、それは物件の見過ぎではなく、予算の土台が定まっていないサインかもしれません。一度立ち止まり、順番を戻すことをおすすめします。

一般的な情報提供を目的とするもので、個別商品の勧誘、税務・法務等の個別助言を行うものではありません。運用成果を保証するものではなく、ご自身の状況に応じた確認が必要です。

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