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JOURNAL / ケーススタディ

50代・教育費のラストスパートと老後準備——両立できるのか

大学費用のピークと定年が同時に近づく50代の不安に、どう向き合うか。老後の収支を数字にして「不安に輪郭」をつけ、退職金と年金の確認から始めた50代ご夫婦の相談事例を紹介します。

大学進学の荷物を前に、教育費とこれからの暮らしを話す50代の夫婦(イメージ)
ケーススタディ
原稿時点とご利用にあたって

この記事は2026年7月原稿の移行版です。制度・税制・統計は当時の説明であり、現在の適用条件とは異なる場合があります。個別の判断前に、公式情報や専門家にご確認ください。

本記事は判断の考え方を伝えるための架空の事例です。実在のお客さまの実績・体験談ではありません。

BEFORE YOU READ

この記事で考えること

50代は、お金の悩みが一度に押し寄せる年代です。お子さまの大学費用はこれからがピーク。一方で、定年までの年数は指折り数えられるほどになり、「老後の準備、間に合うのか」という焦りが背中から近づいてきます。教育費と老後準備、どちらも待ったなし。この二つを天秤にかける感覚は、50代のご相談で最も多く伺う悩みのひとつです。

今回は、その典型ともいえるご夫婦のケースをご紹介します。結論を先に言えば、状況を変えたのは特別な商品でも裏技でもなく、「老後の設計を数字にする」という地味な作業でした。

本記事の事例は、よくあるご相談をもとに再構成した架空のケースです。実在の個人・世帯とは関係ありません。

相談者プロフィール

  • 50代前半のご夫婦。夫は会社員、妻はパート勤務
  • お子さまは2人。上のお子さまが大学進学を控える
  • 貯蓄はあるが、教育費でどこまで減るのか見通せていない

これまで家計が苦しかったわけではありません。ただ、教育費の出口と老後の入口が同時に見えてきたことで、「今のやり方のままでいいのか」が急に不安になった、というご相談でした。

相談前の悩み——大学費用のピークと定年が、同時に見える

ご夫婦の不安は、突き詰めると「教育費に貯蓄をどこまで使っていいのか分からない」という一点でした。使いすぎれば老後が立ち行かない気がする。かといって教育費を削る選択は取りたくない。基準がないまま、支出のたびに小さな罪悪感が積もっていく状態です。

不安を大きくしていた背景もあります。老後資金の話題では大きな金額が飛び交いますし、退職金も親世代と同じ水準を期待できるとは限りません。実際、大卒の退職金の平均は2008年の約2,280万円から2023年には約1,896万円へと減少しています。

2008年約2,280万円
2023年約1,896万円

こうした話を断片的に耳にするたび、不安は膨らみます。ところがご夫婦は、ご自身の退職金の見込み額も、年金の見込み額も、一度も確認したことがありませんでした。つまり不安の正体は「足りない」ではなく「分からない」だったのです。

相談で整理したこと——不安を数字にすると、輪郭ができる

私が信用金庫にいた頃、売る側として学んだことがあります。老後不安が漠然としているお客さまほど、商品の提案を受け入れやすいということです。「なんとなく不安だから、なにか備えなければ」という状態は、売る側から見れば追い風になります。だからこそ、順番を逆にしてほしいのです。商品を検討する前に、まず自分の数字を確かめる。それだけで、必要のない備えに手を出さずに済みます。

ご夫婦と最初に取り組んだのは、次の確認作業でした。

  1. 退職金の見込みを確認する勤務先の退職金規程や人事部門への照会で、おおよその見込み額と受け取り方の選択肢を把握する
  2. 年金の見込みを確認するねんきん定期便や公的な試算サービスで、夫婦それぞれの受給見込みを確認する
  3. 定年後の生活費を見積もる今の生活費をベースに、定年後に減る支出と残る支出を仕分けする
  4. 教育費の残りを固定する大学卒業までに必要な残額をおおづかみに見積もり、「ここまでは使う」と先に決める

よく知られる「老後2,000万円」という数字も、元をたどれば毎月約5.5万円の取り崩しが30年続くという平均モデルの積算にすぎません。平均モデルの答えがそのままご自身の答えになることは、まずないのです。大切なのは、他人の平均ではなく自分の数字で同じ計算をしてみることでした。

POINT

教育費と老後準備の両立に悩んだら、先に「老後の収支」を数字にする。教育費に使っていい上限は、老後側から逆算して初めて決められる。

その後の変化——「どこまで使っていいか」が言えるようになった

確認の結果、ご夫婦の老後の収支には確かに不足が見込まれました。しかし同時に、その不足は「定年までの積み増し」と「定年後の働き方」で埋められる規模だということも分かりました。漠然と恐れていた頃より、不安はむしろ軽くなったとおっしゃっています。

一番の変化は、教育費への向き合い方でした。「ここまでは教育費に使っても老後は成り立つ」という線が引けたことで、支出のたびの罪悪感が消えたのです。上のお子さまの進学についても、金額ではなく本人の希望を軸に話し合えるようになりました。

不安は、数字にした瞬間から対策に変わる。

まとめ——両立の鍵は、老後の数字を先に確かめること

同じ50代の方への示唆は、次の三つです。

  • 「教育費か老後か」で迷う前に、退職金と年金という自分の数字を確認する
  • 老後の収支に輪郭がつけば、教育費に使える上限は逆算で決められる
  • 平均モデルの金額に怯えない。答えは平均ではなく、わが家の数字の中にある

50代は遅すぎる年代ではありません。定年まで時間がある今だからこそ、確認から始める価値があります。知らなかったことは、教わる機会がなかっただけ。今日から確かめれば十分に間に合います。

原稿に記載された出典・参考資料

  • 厚生労働省「就労条件総合調査」等(大卒の退職金平均、2008年・2023年)
  • 金融庁 市場ワーキング・グループ報告書(2019年)

一般的な情報提供を目的とするもので、個別商品の勧誘、税務・法務等の個別助言を行うものではありません。運用成果を保証するものではなく、ご自身の状況に応じた確認が必要です。

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