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JOURNAL / ライフイベント

親のお金の話は元気なうちに——実家・介護・相続の「最初の一歩」

親とお金の話をしたいのに、縁起でもないと思われそうで切り出せない方へ。なぜ元気なうちでなければいけないのか、最初に共有したい3つのこと、角の立たない切り出し方の実例までを順番にお伝えします。

実家の縁側で、お茶を囲んで話す親と大人の子(イメージ)
ライフイベント
原稿時点とご利用にあたって

この記事は2026年7月原稿の移行版です。制度・税制・統計は当時の説明であり、現在の適用条件とは異なる場合があります。個別の判断前に、公式情報や専門家にご確認ください。

BEFORE YOU READ

この記事で考えること

親の介護や実家のこと、そして相続。「いつかは話さなければ」と思いながら、先延ばしにしていませんか。縁起でもないと怒られそう、財産を催促しているように聞こえたらどうしよう——そんなためらいから、帰省のたびに切り出せずに帰ってくる。ご相談の場で、本当によく伺うお話です。

その話しにくさは、あなたが薄情だからではありません。むしろ親を大切に思うからこそ、傷つけたくなくて言葉を選んでしまうのです。私自身、14歳で父を亡くしており、「話せるうちに話しておけばよかった」という感覚は、理屈ではなく実感として持っています。

この記事では、なぜ「元気なうち」でなければならないのかを整理したうえで、最初に共有したい3つのことと、角の立たない切り出し方の実例をお渡しします。

なぜ「元気なうち」なのか——判断能力がある間にしかできないことがある

「まだ元気だから、その話は早い」。多くのご家庭がそう考えます。しかし順序は逆で、元気なうちにしかできないことがあるのです。

一般に、契約や財産の管理に関わる手続きの多くは、ご本人に判断能力があることが前提になっています。判断能力が低下してからでは、選べる手段が大きく狭まり、家族であっても本人の財産を動かすことが難しくなる場合があります。また、ご本人が亡くなると口座の取引が制限されるのが一般的で、遺された家族が当面の支払いに困るケースもあります。

私は信用金庫の窓口で5年間働き、こうした場面を何度も見てきました。ご家族が困るのは、財産が多いか少ないかではありません。「どこに何があるか分からない」「本人がどうしたかったのか分からない」——この2つが分からないときに、手続きも気持ちも止まってしまうのです。

話は、元気なうちにしか始められない。

最初に共有したいのは、金額ではなく「3つの所在」

最初の一歩で、財産の金額まで聞き出す必要はありません。むしろ金額の話から入ると、催促のように響いてしまいます。共有したいのは、次の3つです。

① 資産と契約の「所在」——どこに、何があるか

どの金融機関に口座があるか、保険はどこで入っているか、実家の権利関係の書類はどこにあるか。金額は聞かなくて構いません。「一覧の場所」が分かっているだけで、いざという時の家族の負担はまるで違います。

② 本人の「意向」——どう暮らし、どう使いたいか

介護が必要になったら自宅で過ごしたいのか、施設も選択肢なのか。実家はどうしたいのか。お金を何に使うことが本人の幸せなのか。手続きより先に、この意向を聞けている家族は強いです。介護や住まいの選択で迷ったとき、判断の軸が「本人の言葉」になるからです。

③ いざという時の「連絡先」——誰に相談すればよいか

かかりつけの病院、加入している保険の窓口、付き合いのある税理士や専門家。緊急時に「誰に電話すればよいか」のリストがあるだけで、初動が変わります。親御さんが日頃どんな人に相談しているのかを知ること自体が、暮らしぶりを知ることにもつながります。

POINT

聞くのは「いくら」ではなく「どこに・どうしたい・誰に」。金額に踏み込まない3つの所在から始めると、催促の響きになりません。

切り出し方の実例——自分の話から始める

それでも最初のひと言は難しいものです。実際にご相談者の方々がうまくいった切り出し方には、共通点があります。親の話ではなく、自分の話から始めることです。

  • 自分の家計相談を口実にする——「この前、家計の相談でFPに行ったら、親の保険や口座のことも聞かれてね。うちはどうなってるの?」。自分が先に懐を開くと、相手も開きやすくなります。
  • ニュースをきっかけにする——相続や介護の話題がテレビや新聞に出たときに、「うちだったらどうする?」と一般論として振る。特定の誰かの話ではないので、角が立ちません。
  • 自分の備えを先に見せる——「私も何かあったときのために、口座と保険の一覧を作ったんだ」と自分のリストを見せる。「あなたも作って」ではなく「一緒に作らない?」に変わります。

一度で全部を聞こうとしないことも大切です。最初の帰省では「保険はどこの窓口か」だけ、次の機会に「実家をどうしたいか」だけ。話題にしてよいのだ、という空気を作ること自体が、最初の一歩の成果です。

もうひとつ、兄弟姉妹がいる方は、聞いた内容を早めに共有しておくことをおすすめします。誰か一人だけが親のお金の話を進めていると、他の家族に「抱え込んでいる」ように映ることがあるからです。オープンにすること自体が、将来の揉めごとの予防になります。

話が具体的になったら、専門家と一緒に

共有が進むと、相続税はかかるのか、実家の名義はどうするか、といった具体的な論点が出てきます。ここから先は、家族だけで結論を出そうとしないでください。善意で調べた断片的な知識で判断すると、かえって手続きをこじらせてしまうことがあります。税金の計算や法的な手続きの判断は、前提がひとつ違うだけで結論が変わる世界です。相続税や不動産の名義といった個別の判断は、税理士等の専門家にご確認ください。

家族での共有は「専門家に相談できる状態を整えること」がゴールです。所在と意向が分かっていれば、専門家への相談は短時間で核心に入れます。

まとめ——目的は金額を知ることではなく、家族が困らないこと

親のお金の話の進め方を、流れでまとめます。

  1. 元気なうちに、自分の話から切り出す手続きの多くは判断能力がある間にしか選べない。自分の備えを先に見せると角が立たない
  2. 金額ではなく「3つの所在」を共有するどこに・どうしたい・誰に。一度で聞き切ろうとせず、話せる空気を作る
  3. 兄弟姉妹とオープンに共有する一人で抱え込まず早めに伝えることが、将来の揉めごとの予防になる
  4. 具体的な論点は専門家と詰める相続税や名義などの個別判断は、税理士等の専門家に相談できる状態を整える

この話し合いの目的は、財産の金額を知ることではありません。いざという時に、家族が迷わず、揉めず、本人の望むように動けること。次の帰省が、その最初の機会になれば幸いです。

一般的な情報提供を目的とするもので、個別商品の勧誘、税務・法務等の個別助言を行うものではありません。運用成果を保証するものではなく、ご自身の状況に応じた確認が必要です。

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